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Labid Journalは公共入札に関する基礎知識や市場トレンド、自治体や官公庁など行政機関への営業手法についてを発信するメディアです。

本日は自治体営業・官公庁営業における競争入札で必須知識となる、随意契約について仕組みからメリット・デメリットまで、簡単にわかりやすく解説します！一般競争入札とは異なる入札方式となるため、違いを理解することが重要です。

また、経済産業省が推進する「スタートアップ育成5か年計画」により、入札参加や随意契約のルール変更が検討されているため、スタートアップ企業にとってはチャンスが拡大する見込みです！こちらについても解説しています！

そもそも随意契約とは？

随意契約とは地方自治体・官公庁などが競争入札によらずに任意（随意）で決定した相手と契約を締結する契約方法のことです。

入札とは地方自治体・官公庁などの行政機関や、独立行政法人などの外郭団体といった公的機関が民間企業に業務を発注し、契約締結を実施するための仕組みです。

このような仕組みとは別に認められているのが随意契約であり、「地方自治法施行令第167条の2第1項」、もしくは「地方公営企業法施行令第21条の14」の第1号から第9号の規定に該当する場合に限り、利用が認められています。

▼以下、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号から第9号、および地方公営企業法施行令第21条の14第1号から第9号の内容

第1号：売買・貸借・請負・その他の契約でその予定価格が一定額を超えないものをする
第2号：契約の性質又は目的が競争入札に適さない場合
第3号：特定の施設等から物品を買入れる、または役務の提供を受ける契約をするとき
第4号：新規事業分野のベンチャー企業から新商品を買い入れる契約をするとき
第5号：緊急の必要により競争入札に付することができないとき
第6号：競争入札に付することが不利と認められるとき
第7号：時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき
第8号：競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき
第9号：落札者が契約を締結しないとき

※参照：神栖市「1 随意契約とは 2 随意契約ができる場合」

随意契約の種類

随意契約は案件の内容により3種類に分類されます。

「特命随意契約」とは

発注をする自治体や官公庁の都合により、事業者を指定して契約を締結する方式です。一般的に「随意契約」とよばれる際にはこのケースが多いです。

「少額随意契約」とは

入札の予定価格が少額のケースで、2社以上の事業者から見積をもらい、契約する相手を決定する方式です。

「不落随意契約」とは

書いて字のごとく、競争入札を実施したにもかかわらず、入札する事業者が不在だったり落札できなかった場合などに、最低価格で入札者と契約を締結することができる方式です。最初からこの形式が採用されることはありません。

随意契約のメリット・デメリット

随意契約によるメリットは下記の3点が挙げられます。

最低価格での落札ではないため、利益率を確保しやすい
入札手続きが不要であるため営業工数が削減される
契約が結ばれた場合の落札が確実

一方で随意契約には下記のようなデメリットもあります。

随意契約実施にいたるまでの難易度が高い
実績が豊富にない場合、落札が難しい

総じて随意契約は随意契約での契約締結にするまでの難易度が高いです。入札経験の少ない企業や担当者にとってはハードルの高い契約方法です。

「一般競争入札」「指名競争入札」との違い

一般競争入札とは、不特定多数の参加者を募り、その中から最も安価な提案を実施した業者と契約を締結する方法です。そのため、特定の事業者と契約締結を前提とした随意契約とは、まるで異なる入札方式であると理解しましょう。
※参考記事：【一般競争入札とは？】メリット・デメリットや他の入札方式との差を分かりやすく解説

また、指名競争入札のように、発注機関が特定の企業を指名し、指名された業者の中から最も安価な条件提示を実施した企業と行う入札とも異なります。特命随意契約と混同しがちなので注意しましょう。

＜入札情報サービスLabid＞

随意契約が認められる条件について

少し詳しい内容となりますが、随意契約が認められる条件について、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号から第9号に則り詳細を解説していきます。

第1号：売買・貸借・請負・その他の契約でその予定価格が一定額を超えないものをする

少額随意契約と呼ばれるものです。契約における事務作業の簡素化を目的として行われる随意契約の方式です。地方自治法施行令により定められた一定金額に収まる案件であれば、随意契約としての契約が認められています。よく「オープンカウンター方式」と呼ばれる方法です。

事前に2者以上から見積書取得し、それぞれを突き合せる「見積り合わせ」が必ず必要です。あくまでも競争性を担保しつつ契約することが前提となります。

（随意契約）
第百六十七条の二　地方自治法第二百三十四条第二項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
一　売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格（貸借の契約にあつては、予定賃貸借料の年額又は総額）が別表第五上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。
二　不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。
※引用：地方自治法施行令

項目 ※参照：地方自治法施行令	対象	金額
一　工事又は製造の請負	都道府県及び指定都市	¥2,500,000
	市町村（指定都市を除く。以下この表において同じ。）	¥1,300,000
二　財産の買入れ	都道府県及び指定都市	¥1,300,000
	市町村	¥800,000
三　物件の借入れ	都道府県及び指定都市	¥800,000
	市町村	¥400,000
四　財産の売払い	都道府県及び指定都市	¥500,000
	市町村	¥300,000
五　物件の貸付け	-	¥300,000
六　前各号に掲げるもの以外のもの	都道府県及び指定都市	¥1,000,000
	市町村	¥500,000

第2号：契約の性質又は目的が競争入札に適さない場合

「競争性がない随意契約」と呼ばれています。「性質又は目的」とは、「契約の内容」と解釈されます。そのため、契約の内容が競争入札に適さない場合に、随意契約が適用されるのです。

例えば、下記のような場合には、"性質又は目的が競争を許さない"と判断されます。

特定のものでなければ役務を提供することができない場合
特殊な技術を用いて設計･施工した施設･設備の保守･点検業務の場合に認められます。
額面価格が定められているものなど，競争性がないと認められる場合
郵便葉書及び切手、収入印紙、新聞、官報等の購入の場合に認められます。このようなケースにおいては、経済性及び競争性の原則の支障にならないものであると考えられ、随意契約が認められます。自治体のミッションは地域の課題解決です。そのため、こうしたケースでは随意契約が認めれるのも納得ですね。

※参考記事：【実は難しくない？】自治体営業・官公庁営業とは？

第3号：特定の施設等から物品を買入れる、または役務の提供を受ける契約をするとき

障害者への職業訓練施設で作成・製作された物を購入する契約をする場合に認められます。また、高年齢者・母子家庭への支援を行う団体から、役務の提供を受ける契約についても同様にも認められています。

第4号：新規事業分野のベンチャー企業から新商品を買い入れる契約をするとき

ベンチャー企業やスタートアップによる目的物・納品物に新規性があり、他の者が納品する物よりも優れた機能性がある場合、地方自治体・官公庁はその機能性からもたらされる利益を享受することができます。

このようなケースにおいては、経済性及び競争性の原則の支障にならないものであると考えられ、随意契約が認められます。自治体のミッションは地域の課題解決です。そのため、こうしたケースでは随意契約が認めれるのも納得ですね。

第5号：緊急の必要により競争入札に付することができないとき

災害時など一般競争入札又は指名競争入札の方法による手続きを行うことができず、早期に契約の目的を達成する必要があるケースなどで認められます。緊急時に入札を行っていては、国や地方の人たちに安心・安全を守ることはできませんよね。

特に日本は地震大国であるため、堤防や道路の崩壊、地すべりなどの災害時における物資の購入や機材の借り入れ、重要設備の故障修理は迅速に行われる必要があります。

そうした事態に迅速に対応するため、随意契約が認められているのです。

これらの通り、随意契約はどのような場合でも認められるわけではなく、一定条件をクリアしている場合のみ実施される契約方式です。

第6号：競争入札に付することが不利と認められるとき

現在行っている事業や継続的事業と密接に関連する事業の契約時にも、随意契約が認められます。

認められている根拠としては、新たに競争入札を行ってしまうと、既存事業の継続を困難にしてしまったり、煩雑性にしてしまうことで、事業自体の完了が困難になることが予想されるためです。

また、入札の手続きには時間もかかります。契約の手続きが長期化することで事業遅滞を招くことを避ける目的があります。他にも、競争入札により予定価格が高騰し財政への影響が生じる場合も考えられます。これらの結果として、地域住民へのサービス提供へ悪影響が発生してしまうため、不利であるとされているのです。

特に大規模な建設工事や大規模な設備・機器の契約において適用されるケースが多いです。

第7号：時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき

提供される物品の品質や性能が他のものと比較しても劣らず問題がなく、また、時価を基準とした予定価格や、競争入札を行った場合よりも明らかに有利な価格で契約できるケースにおいて、随意契約が認められています。

こちらも第6号と同じように建設工事において適用されるケースが多いです。特定業者が事業実施において重要な資材を大量に保有しており、安価な価格で提供してもらえる場合等が該当します。

第8号：競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき

競争入札を実施したものの、何らかの理由で入札者がいない場合や、再度の入札を行っても落札者が現れない場合に認められます。不落随契と呼ばれるものです。

第9号：落札者が契約を締結しないとき

こちらも競争入札を実施したものの、何らかの理由で落札者が契約を結ばない場合に認められます。

落札者が契約を締結しない場合には、日を改めて再度競争入札や指名競争入札にを行うこともありますが、改めて入札をする時間がない場合もあるため随意契約により契約をすることが認められています。

随意契約までの流れ

1. 発注者・機関からの見積書提出依頼

前述の地方自治法施行令第167条の2第1項第1号による「オープンカウンター方式」の場合、各発注者・機関の調達ポータル等から、公開されている入札案件を確認し、仕様書や指示内容に則り見積書を提出する必要があります。オープンカウンター方式では2者以上の見積合わせをすることが求められるためです。

そうではない、1社のみの随意契約の場合は、メールやFAX等で見積書を提出するように依頼があります。

2. 民間企業・業者の見積書作成・提出

依頼もしくは調達ポータルから確認・ダウンロードした仕様書をもとに、見積書の作成を行います。提出までの期間は約1週間から長くても3週間であるため、忘れたり遅れることの内容に注意しましょう。

3. 発注者・機関による見積合わせ

民間企業・業者から受け取った見積書を突合せ、どこに発注をするか決めます。見積書の内容に不備があったり、不足があると選択肢にすら入らないため見積書の作成には十分注意してください。

4. 発注者・機関による契約の締結

契約する民間企業・業者が決定します。契約書や請負書を作成し、正式に業務を遂行するための契約を交わします。
※参考：令和2年1月上尾市総務部契約検査課「随意契約ガイドライン」

政府によるスタートアップのチャンス拡大の促進

2023年以降、スタートアップ企業にとって、随意契約での発注獲得がしやすくなる環境が整い始めています。経済産業省が定めた「スタートアップ育成5か年計画」（令和4年11月28日新資本主義実現会議決定）において、スタートアップの政府調達拡大を目的として、随意契約のルール変更が告知されました。
※参考：内閣官房「スタートアップ育成5か年計画（案）」

下記の引用の通り、自治体・官公庁が調達する物品・役務・工事において、創業10年未満の中小企業からの契約比率を1%（2020年度実績で777億円）から3%（約3,000億円）まで拡大する目標を設定しています。この目標を実現するために、随意契約のルールや入札参加資格制度の変更検討されています。

スタートアップ育成５か年計画（抜粋）
第二の柱：スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
（１２）SBIR（Small Business Innovation Research）制度の抜本見直しと公共調達の促進
（略）○国や独立行政法人などの国の関係機関が調達する物件、工事、サービスについて、創業10年未満の中小企業からの契約比率が１％程度（777億円（2020年度実績））にとどまっているところ、スタートアップからの調達を拡大し、その契約比率を３％以上（3,000億円規模）に早急に拡大する。
（略）○スタートアップの政府調達の参画を拡大するため、随意契約に関するルール、国の大規模研究における加点措置等の検討を含めて、入札参加資格制度の検討を図る。
※引用：令和5年6月経済産業省中小企業庁「令和５年度の基本方針におけるスタートアップに係る取組について

1. 各府省庁の調達機関に対する情報提供が拡充される

自治体・官公庁は従来スタートアップとの取引実績が少ないため、そもそもスタートアップにどのような課題解決が可能なのか、どういった新技術や新サービスを保有・提供しているのかを十分に知りません。

そのため、経済産業省は各機関・組織に対してスタートアップが提供可能な技術やサービスを広く周知させ調達可能な案件の発掘や検討を実行予定です。

また、各自治体・官公庁でスタートアップ調達の課題はさまざまであることが予想されるため、調達を促進する課題についても深掘りを行い対策を検討していくとされています。

2. 調達手続きの見直しが加速する見込み

ご存知の方も多いように、自治体・官公庁への支援実績が乏しくなりがちなスタートアップにおいて、入札へ参加して案件を獲得することの難易度は非常に高いです。こうした課題が積極的な参入を妨げていると考えられるため、政府が定めた一定の要件を満たすスタートアップを対象に、入札参加資格や政府調達手続を見直しが検討されています。

実際に、「物品製造・販売」「役務の提供」では要件を満たせば、上位等級への入札が認められています。

下記の事業者のうち対象入札に係る技術力を証明できる者に対しては、上位等級への入札を認めることができます。
▼対象事業者
・ＳＢＩＲ制度の特定新技術補助金等の交付先中小企業者等
・株式会社産業革新投資機構（ＪＩＣ）の支援対象事業者又は当該支援対象事業者の出資先事業者
・J-Startup に選定された事業者
▼対象入札
・物品の製造
・物品の販売（自らが製造した物品に限る）
・役務の提供等
※引用：「スタートアップにおける公共調達促進」（経済産業省）

3. J-Startup選定企業等の参入が進む

高度な新技術・サービスを保有するJ-Startup選定企業と自治体・官公庁の間で、随意契約が可能となる制度の検討が進んでいます。先ほど引用した経済産業省サイトにおいても、J-Startup選定事業者は入札で上位等級の案件参加が認められています。
※参照：日本経済新聞「スタートアップ、政府調達参入しやすく随意契約など促す」

J-Startupとは、世界で活躍し勝てるスタートアップ企業を日本から生み出すことを目的として、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成プログラムです。ベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、大企業のイノベーション担当や外部審査委員により、厳正な審査で選ばれた企業がJ-Startup企業として選定されています。
※参考：J-Startup公式サイト
※参考：J-Startup公式サイト「startup一覧」

詳しくは下記記事でも解説していますので、ぜひご活用ください。
※参考記事：【スタートアップでも随意契約が取れる？】SBIR制度の見直しと公共調達促進の概要解説

まとめ

いかがでしたでしょうか？随意契約は実施ができるとメリットの多い入札方式ではありますが、落札するのは簡単ではありません。自社事業の強みが明確な場合や、競合の少ない領域で事業を行っている場合はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか？

しかしながら、経済産業省が推進する「スタートアップ育成5か年計画」により、スタートアップ企業にとっては入札参加や随意契約のルール変更が間もなく行われるため、チャンスは拡大していくものと思われます。これからの政府の動向に注目していきたいですね！

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